よろず帳

旅と銭湯、その他思いついたこと色々。

小噺『ホタルあれこれ』

「なあ、ホタルって知ってるか?」
「あー…確か尻の光る虫だっけか。」
「そうそう、これは聞いた話なんだが…。」




「日本人はホタルが恐いらしい。」




「怖い?あの何でも米の上に乗っけて食っちまうワイルドな奴らがか?」
「俺も耳を疑ったんだが…どうやら日本人はホタルの光に対してかなりの恐怖心を持ってるらしい。」
「なんだ、目に悪かったりするのか。」
「いや、日本には『ホタルの光が聴こえたら、直ぐにその場から立ち去れ。』という掟があるそうだ。」
「『光が聴こえたら』ってなんだよ。」
「多分ホタルが光を発する際に音が鳴るんじゃないか?電球だってよく聴いたら『ジジジジ』って音がするだろ。」
「あー…じゃあ『音が聴こえたら近くにホタルがいるから逃げろ』ってことなのか?」
「おそらく…。日本では夜遅くなるとあちこちでホタルの光が鳴り出して、それを聴いた人たちは飯の途中でも家に帰るんだとさ。」
「ホタルってそんなにあちこちいる物なのか?」
「さあな。無視してその場に居続けると店員が早く帰るよう諭しに来るとも聞いたな。」
「日本人の助け合いの精神ってやつかねぇ…。」


「しかしそんなにあちこちにホタルが出るんなら、普通の生活送れなくなるんじゃないか?」
「いや、どうやらただ怯えてるだけでもないらしいぞ。」
「お!ついにホタル丼にしちまったのか。」
「バカ言え。日本に昔から伝わる歌があるんだ。」


 ほ ほ ほたるこい
 こっちの水はあまいぞ
 そっちの水はにがいぞ…


「なんだそりゃ。」
「要するに、罠をはってホタルをおびき出そうとしてるのさ。日本では夏になると『ホタル狩り』というのが行なわれるそうだ。」
「ホタルひとつで大騒ぎだな日本人。」
「まぁ向こうにしちゃ一大事なんだろうさ。そういや『ホタルの墓』なんて映画もあるらしいぞ。」
「凄いタイトルだな…。ホタルと戦う映画だったりするのか?」
「いや詳しくは知らんが…。そういや有名な台詞があったな。」
「どんな?」




『おにいちゃん、なんでホタルすぐ死んでしまうん?』
「狂人じゃねぇか。」