怪談風小噺【後ろにいる女】
夏の夜の事です。あるカップルが山へツーリングへ出かけました。
時間帯が遅く他に車も走っていなかったので、男はスピードを上げ、ぐにゃぐにゃに曲がった山道を右に左に体を倒しながら進んでいきました。
三十分ほど走った頃、男はある違和感を覚えます。
出発してからずっと自分の後ろに何か気配を感じるのです。
しかし、バックミラーを覗いても後ろには何も走っていません。
進めども進めどもその気配がついてくるので、男はどうにか振り払おうとスピードを上げました。
その時です。
何かが肩を「とん」と叩きました。
「虫か木の葉でもあたったのだろう。」と男はそのまま走り続けます。しかし
とん…とん…
今度は二回。
とうとう確信します。
「後ろに何かいる、振り返ってはいけない!」
男はさらにスピードを上げました。
とん…とん…
「やめろ...やめてくれ…」
とん..とん..とん..とん..
「頼む…早くいなくなってくれ!」
とん とん とん とん とん
耐えきれなくなった男はバイクを停め、ぱっと後ろを振り返りました。
そこには青白い苦しそうな顔をした女が、男の顔を恨めし気に睨んでいたのでした…。
後ろに乗せていた女性が酔ったのでバイクを停めて欲しかっただけのお話。